そして嘉音が何故ベアトリーチェに変装できたのか。そもそも嘉音は何者なのか?
16歳の少年が化粧をすることで肖像画そっくりに化けていた。この仮定はちょっと無理のある所で、特定の顔を作る化粧なんて簡単に出来るものじゃないんですよね。
肖像画のモデルが女装嘉音だったら可能なんですが、九羽鳥庵に肖像画そっくりの女性が存在した以上、単に嘉音がモデルだった訳じゃない。
ここでチェス盤をひっくり返すと、16歳少年が肖像画そっくりに化けるのは無理かもしれない。でも19歳肖像画の女が16歳少年に化けるのは可能じゃないでしょうか。
つまり嘉音にとって、ベアトリーチェそっくりの姿が本来の姿で、使用人の少年は変装と言う事です。性別も女性でしょうね。
嘉音の正体は、九羽鳥庵のベアトリーチェが死んだ後に金蔵が連れてきた赤ん坊。
親族に隠して島で育てられた、金蔵の昔の恋人を蘇らせる為の依り代です。
そして恐らく、戦人の初恋の女の子で、迎えにくるよ!と約束した相手でもあります。
ここでちょっと話は変わりますが、うみねこの「魔法」が作中でどんな意味があるか。考えた事はあるでしょうか。
戦人とベアトリーチェが対戦する。人間VS魔女の戦いだから、魔女は魔法が使える事になってないと話が成立しない。
それは確かですが、少し考えるとそれだけじゃない事に気が付きます。
魔法には「良い魔法」「悪い魔法」が存在します。良い魔法は人を幸せにする魔法。悪い魔法は人を不幸にする魔法です。
良い魔法が使えるワルギリアのモデル・熊沢は人を楽しませる嘘を付く人物としてゲーム盤に登場します。
対して魔法の才能がない、と言われた蔵臼・夏妃は使用人と共謀して金蔵が生きているように見せる嘘(魔法)を使いましたが、結果として誰かが幸せになった様子は見られません。
つまり良い魔法ではなかった訳で、ここが長男夫婦に才能がないと言われた所以でしょう。
同じように魔法の才能がないのは戦人と金蔵。戦人は使う側というより抵抗力を指して言われてる節があるので(エンドレスナイン)、嘘に屈服しない精神力を指しているんでしょう。
では、金蔵は何故魔法の才能がないんでしょうか。そして召喚能力のみ高いと設定されてるんでしょうか。
もう1つ、魔法の中で頻繁に出てくるもの。失ったものを蘇らせる能力です。
これは本当に沢山出て来ます。真里亞の薔薇(EP1~4)、ハロウィンのマシュマロ(EP2)、さくたろう(EP4)、戦人(EP4)、ベアトリーチェ(EP6)。
全てに共通しているのが、失われたものは戻って来ない事。仮に戻ってきても、それはよく似た偽物で代用しているだけです。
代用品が用意できなければ不可能なのが蘇生術で、さくたろうは縁寿が代用品を見つけたお陰で復活した(と真里亞が誤解した)んですが、これを人間に適用するのは無理でした。
縁寿は戦人を蘇らせる事は出来ないし、EP6の戦人はベアトリーチェを手に入れたのに、求めるベアトリーチェと違う事に苦しみます。
物は外見が同じなら誤魔化せるんですが、人間だと中身の問題もあるから「似た人間を連れてきたよ!はい復活!!」なんて無理ですよね。
この辺の話はベアトリーチェの過去話と合わせて、六件島の真実を暗喩する描写です。
おそらく金蔵には昔、ベアトリーチェ(以降オリジナルベアトと呼びます)という名の片思いの相手がいた。
当時の金蔵は長老たちに強制された結婚相手がいてオリジナルベアトと結婚できなかった。あるいはオリジナルベアト自体、金蔵に恋愛感情がなかったのかも。
そうこうしている内にオリジナルベアトは死んでしまいます。金蔵の一言謝りたい、の嘆きを見る限り、金蔵に原因があったのかもしれません。
オリジナルベアトが死んだ後、悲しんだ金蔵がどうしたか。金蔵はオリジナルベアトを諦めきれず、彼女を蘇らせようとします。
ただし金蔵が使った魔法は西洋魔術なんかじゃなく、うみねこ的魔法。つまり「似た代用品(人間)を用意する」「嘘をついてオリジナルベアトそっくりに育てる」でした。
これが九羽鳥庵にいたベアトリーチェ(九羽鳥ベアト)で、赤ん坊の頃からオリジナルそっくりの性格になるよう育てられた女性です。
何故オリジナルベアトに外見がそっくりだったのか。多分、血縁関係があるんでしょうねぇ。オリジナルベアトの娘(非金蔵の娘)か、妹か、姪っ子か。そんな所でしょう。
九羽鳥ベアトとオリジナルベアトがどの程度似ていたのか。読者は知る由もありませんが、少なくとも金蔵が期待した、金蔵への恋愛感情は生まれなかったようです。父親・友人と回想で言ってますから。
金蔵の最終的な望みは、オリジナルベアトそっくりに育った九羽鳥ベアトと恋人になって結婚する事だったようですが(礼拝堂を見るに)、叶わないまま九羽鳥ベアトは転落死します。
再び金蔵は悲しみます。その後どうしたか。懲りもせず代用品の赤ん坊を連れてきて、オリジナルベアトそっくりに育てようとしたんでしょうね。19年前の赤ん坊がそうです。
夏妃は数日の間、見るのも嫌だったから気付かなかったんでしょうが、赤ん坊は男じゃなく女だったんでしょう。この子が後の嘉音です。
嘉音を生んだのは明日夢かと思います。ベアトリーチェが戦人の出生の秘密を知っていたり、当主試験の手紙入れがシガーケースだったり。留弗夫との繋がりを暗示させる描写が多いからですから。
おそらく19年前に九羽鳥ベアトが死んだ当時。金蔵はオリジナルベアトに似た赤ん坊が欲しかった。明日夢は留弗夫のお嫁さんになりたかった。留弗夫は霧江を須磨寺家の制裁から守りたかった。
この3者の思惑が一致した結果。
・金蔵は明日夢に子供を産ませる見返りに、須磨寺家に支援して霧江を守る。留弗夫と明日夢を結婚させて、霧江の子供も2人で育てさせる。
・明日夢は留弗夫と結婚する見返りに、金蔵が望む赤ん坊を提供する。他言無用を守る。
・留弗夫は霧江を助けてもらう見返りに明日夢と結婚する。霧江の子供も明日夢との子供として育てる。
このような取引が行われたのだと思います。霧江は何も知らないので、まるで明日夢が留弗夫を寝取ったように見えたんでしょう。実は明日夢と留弗夫、肉体関係すら無かった可能性もありそうですけど。
明日夢の子供が霧江の出産予定日と同じ日だったのも事前工作の嘘でしょうね。実際は、明日夢と留弗夫が結婚した当時、既に赤ん坊は生まれてたんだと思います。11月29日に。
明日夢の子供がどうしてオリジナルベアトに似ていると金蔵が考えたか。
考えられる事は2つあって、1つは単純に明日夢がオリジナルベアトの血縁者だったとする考え。明日夢、て名前は日本人離れしてますし。父親が外国人なら子供もそれらしくなりそうです。
もう1つは、医者の南條に協力してもらって、九羽鳥ベアトあたりから持ってきた卵子を明日夢に代理出産させた可能性。時代的に少々苦しいですが、一応可能かもしれません。
さて。そうこうして手に入れた赤ん坊。後の嘉音ですが、どこで育てるか。金蔵も迷ったんでしょう。
九羽鳥庵は九羽鳥ベアトが逃げようとしたから使いたくない。なるべく目の届く所と考えて夏妃に預けたんでしょうが、夏妃は拒否してしまった。
仕方なく本館の近く、多分黄金部屋や九羽鳥に続く通路辺りに隠して育てたんだと思います。源次・熊沢・南條は昔からの協力者なので養育に携わってると思われます。
ここで問題になるのが、本館に近ければ親族に気付かれる可能性がある事。完全に地下に閉じ込める事は不可能だし、表に出てる時に家人が気付く可能性があります。
その対策として金蔵が打ち出したのが、木を隠すなら森と言いますか。福音の家の孤児を使用人として使って、子供が島にいても不自然じゃない状況を作る事でした。
そしてもう1つ、森の魔女ベアトリーチェ伝説を拡大して、屋敷の中に魔女がでる噂を作りました。
この金蔵の魔法(こう呼んで差し支えないかと)によって、六件島に女の子が1人隠れ住んでいる事実は装飾され、女の子が消えて魔女伝説が残りました。これがEP6の姉ベアトです。
赤ん坊が成長して、金蔵が加齢と病気で彼女の所に通えなくなった頃。金蔵は女の子に男装させて使用人として表に出します。これが使用人嘉音の正体です。
新参の嘉音が何故片翼の鷲を貰えたのか。金蔵が書斎に入る事を許可したのか。単純に嘉音が愛人だったからでしょうね。
男装させた理由は、女の子で同じ事をしたら贔屓=愛人と露見するから。後、変な虫が寄ってきたら困ると思ったのかもしれません。なんにしても勝手な理由です。
それから嘉音が朱志香に答えられない理由。長く勤められない理由。無愛想な理由。これは女の子だとバレる限界がある所為だと思われます。てか嘉音16歳の時点で苦しくなってきてる筈。
嘉音が務め始めたのは3年前。昼間は嘉音として書斎に通い金蔵に会う。夜は本来の姿に戻って書斎に行く。郷田が見た人影は女姿の嘉音が金蔵の書斎に行く所だったんでしょう。
EP6妹ベアトは使用人嘉音の事です。鏡を見られない=普段の姿は異なっている。使用人嘉音と魔女伝説が合わさる事で、金蔵が隠していた少女(=出題編ベアトリーチェ)の完成です。
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